(鎮静月三部作・第二部)
2026年7月29日、満月。 夜の底、23時36分に満ちる。バックムーン。
前回の上弦「帰る」から、月は満ちてきた。 半分だった光が、円になる。
今日は──思い出す、について。
満月──満ちる月は、何も足さない
満月と聞くと、多くの言葉が並ぶ。 願いを叶える。引き寄せる。手に入れる。
けれど、満月は何も足さない。
満ちる月がするのは、照らすこと。 それだけ。
暗がりに隠れていたものが、隠れていられなくなる。
なかったものが現れるのではない。
ずっとそこにあったものが、見えるようになる。
だから満月は、獲得の相ではななく、思い出しの相。
価値は、手に入れるものではなかった。 もともと、そこにあるから。
水瓶座の満月──群れの中で、自分に還る
今日の満月は、天文の空では山羊座に、占星の空では水瓶座に位置する。
星座とサイン、二つの体系のずれ。どちらも、同じ月を指している。
水瓶座は、型から自由になる座。 世間の形に自分を合わせることをやめ、本来の個へ還っていく。
向かいの空には、獅子座の太陽。 自分を差し出す輝きと、群れの中でも自分を失わない個。 その二つが、満月の軸で向かい合う。
満ちる光の下で照らされるのは、借りものではない姿。
そそっかしくて、どんくさい
飛んでいた。 振り回していた。 夢中で、転んだ。
そのたびに、同じ声に叱られた。 「どこを見ているんだ」と。
けれど、見ていなかったのではない。 夢中になれるものの方を、見ていた。
叱られて、引っ込めた。 飛ぶ力を。振り回す弧を。風を切る速さを。
そそっかしくて、どんくさい。 その人が、わたしは、今は好き。
先週、また転んだ
落ち葉を掃いていて、転んだ。
疲れているのかと思った。 夏の落ち葉掃除は、重い。早く終えたいと思っていた。
けれど、違った。
無我夢中に、なっていた。 早く卒業したいと思っていた作業を、いつのまにか、楽しんでいたのかも。
あの、ソファで飛んでいた子は、消えていない。 何十年も経って、同じ人が、同じように夢中で、転んでいる。
満月が照らし出したのは、遠い昔ではなかった。 今、この手の中に、ずっといた。
思い出すとは、掘り起こすことではなく、すでにここにいた自分に、気づくこと。
外は、変わらない。 落ち葉は、また積もる。
変わったのは、それを掃く人が、 誰であるかを、思い出したこと。
次の下弦に、最後の綴りを残します。 ──書く、について。
本日の一言
「すべての大人の中に、ひとりの子どもが潜んでいる。永遠の子どもが。
常に生成しつつあり、決して完成することなく、絶え間ない世話を求めている。
それは、全体になろうとする、人格の一部である」──カール・ユング
その子どもは、過ぎ去った過去ではない。 今も、生成しつつある。
鎮静月ラボ|氣づきの綴り

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